日商簿記2級は高度な簿記の知識を有する証として、就職や転職で武器になる資格です。
資格学校でも必ずといっていいほど講座が用意されていることからも、その需要の大きさがわかります。
しかし、こうした学校を利用するとある程度のお金がかかってしまいます。
市販のテキストを用いて独学で合格ができるのなら、出費を抑えられるので助かりますよね。
この記事では、実際に日商簿記2級に独学で合格した私の経験を基に、これから独学で2級に挑む方に向けた情報を提供しています。ぜひ参考にしてみてください。
日商簿記2級の概要
最初に簿記2級の試験について、簡単にその概要を確認しましょう。
“日商”簿記?
簿記の検定試験には『日商簿記』と『全経簿記』、『全商簿記』があります。
主な試験対象は以下の通りですが、日商簿記が最も有名であり、一般的に「簿記検定」といえば日商簿記を指します。
日商簿記
大学生や社会人が対象
全経簿記
経理・会計の専門学校の生徒が対象
全商簿記
商業高校の生徒が対象
試験科目・時間・合格基準など
【試験科目】
商業簿記と工業簿記から5題出題
【試験時間】
90分
【合格基準】
70%以上
【試験方式】
ネット試験(CBT)
または
ペーパー試験(統一試験)
さらに詳しい内容については、日本商工会議所のHPで確認してください。
https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2
最近の合格率
日本商工会議所に掲載されている簿記検定2級の合格率を掲示します。
ペーパー試験(統一試験)
[参照] 日本商工会議所HP
ネット試験(CBT)
[参照] 日本商工会議所HP
上記を見ると、ネット試験の方が合格率が高くなっています。
ネット試験とペーパー試験について、日本商工会議所では以下のとおり説明しています。
「出題範囲・問題の難易度・合格基準いずれも同じです。合格した場合は同等の資格を得ることができます。」
『日本商工会議所HP』より
日商簿記検定試験(2級・3級)ネット試験(インターネット申込方式)に関するQ&A | 商工会議所の検定試験 (kentei.ne.jp)
難易度が同じということなので、この違いは以下の要因があるように思われます。
- 勉強の進捗に合わせて受験のタイミングを選べること
- 不合格でも、復習してすぐに再受験が可能であること
簿記2級は昔に比べて難易度が上がっている
簿記2級は過去に何度か試験範囲の改正が行われています。
特に2017年の改正で2級の範囲に加わった連結会計は、元々1級の範囲にあった内容であり、一気に難易度が高まりました。
他にも税効果会計やリース会計なども加わっており、それ以前の2級試験とは別格といえる資格試験となりました。
ただし、工業簿記についてはこの改正の影響を受けておらず、難易度の変化がありません。
そのため、簿記2級では工業簿記を得点源とすることもポイントとなります。
簿記2級は独学でも大丈夫
まずお伝えしたいのは、簿記2級は独学で合格することができます。
私自身が独学で合格しているので、自信を持ってそう言うことができます。
簿記は不得意でした
私は過去に簿記3級と2級でそれぞれ1度ずつ不合格を経験しており、決して簿記が得意というわけではありませんでした。(むしろ苦手意識がありました)
ですが、そんな私でも市販のテキストで2級に合格するとができましたよ。
市販テキストでも十分
各社から販売されている簿記のテキスト・問題集は大変良くできています。
もちろん、1回読むだけでは合格は難しいですが、間違えた問題を中心に繰り返し練習することで、ちゃんと合格ラインに到達することができます。
さらに、YouTubeでも解説動画を見ることができます。
テキストだけでは理解できない部分があっても、こうしたツールを部分的に利用することで十分理解が深まるでしょう。
簿記検定は『ネット試験』で受けるべし
簿記2級はネット試験での受験をおすすめします。
理由① 最も勉強の記憶があるときに受験できる
ペーパー試験では試験が年3回(6月・11月・2月)と決まっているのに対し、ネット試験では好きな日程で受験をすることができます。(定期的に受付停止期間はあります)
そのため、学んだ内容を鮮明に覚えている間に試験を受けることが可能です。
理由② すぐに再受験が可能
また、万が一試験に落ちてしまった場合でも、すぐに再受験することも可能です。
「もう少しで合格」というところまでいけたのなら、苦手箇所を1~2週間しっかり復習することで合格ラインまで引き上げることができるでしょう。
「次の試験が何カ月か先」となってしまうとモチベーションの維持が難しくなりますので、鉄は熱いうちに打て作戦でいきましょう。
理由③ 実際に合格率が高い
『簿記2級の概要』部分でも記載しましたが、実績としてネット試験の合格率はペーパー試験よりも高い傾向にあります。
受験時期を選べたり、再受験が可能だったりすることがその理由だと思われますが、「合格率が高い」という事実は精神的に助かります。
どうしてもペーパー試験を受けたい、ということでないのであれば、ネット試験での受験をおすすめします。
勉強時間は簿記3級所有者で250時間~300時間
簿記2級の合格に必要とされる時間の目安は以下の通りです。
これらはいくつかの資格学校の情報を参考にしたものですが、私の体感的にも概ねこれくらいかな、と思います。
初学者 300時間~400時間
3級所有者 200時間~300時間
仮に300時間必要だとして、1日あたり2時間の勉強時間を確保できるのであれば、約5カ月かかるという計算になります。
簿記2級の勉強について
独学で簿記2級の勉強をする際のポイントを紹介します。
テキストや問題集はどれか一つに絞る
市販されているテキストはどれも、簿記2級を受験するために必要な知識がしっかりと記載されています。
自分に合う・合わないテキストがあるというのも事実ですが、あれこれ手を出すと時間とお金が無駄になってしまいます。
まずは1冊しっかりと取り組むことを優先してほしいと思います。
もちろん、今のテキストでは分からない部分がある、ということもあると思います。
後半でも紹介しますが、そうした場合にはネットやYouTube動画などで補足的に学習すれば十分です。
分からなければ、解説をすぐに見る
分からない問題は、逐一解答を見ながら解くと良いでしょう。
まずは解き方のパターンを知り、次に自分で考え、分からなければまた解答を参照します。
いつまでも悩んでいると時間の無駄ですし、モチベーションが下がってしまいます。
私の場合は、第3問について1仕訳ごとに解答を確認して進めていました。
問題を知る
簿記に限らず、試験では問題の構成を知って対策を立てることが大切です。
簿記2級は以下の5つの問題から構成されています。
対策方法を参考に、しっかり準備を行ってください。
第1問(配点 20点)
【対象科目】 商業簿記
【出題問題】 仕訳問題
第1問については仕訳問題です。
範囲は広いですが、基本的な問題なので得点源にするべき箇所です。
反復練習で仕訳を頭に定着させておきましょう。
一部ひっかけ的な問題もありますので、問題文はしっかり読むようにしてください。
第2問(配点 20点)
【対象科目】 商業簿記
【出題問題】 株主資本等変動計算書・連結会計などからの応用問題
第2問は出題方法のバリエーションが豊富であり、暗記よりも理解が求められます。
さまざまなパターンに触れて慣れておきましょう。
第2問は難しい設問であり、特に連結会計が出題された場合には満点を狙うことが困難となる場合が多いです。
そのため、実際の試験では他を先に回答し、最後に取り組むことをおすすめします。
第3問(配点 20点)
【対象科目】 商業簿記
【出題問題】 決算整理を含む総合問題
第3問は未処理事項や決算整理仕訳を作成する問題となります。
減価償却の計算や棚卸資産の計算など、ひと手間かかる計算をスムーズに行えるようにしておきましょう。
こちらも第2問と同様に全問正解を狙うのは難しいため、試験当日では後半に処理することをおすすめします。
第4問(配点 28点)
【対象科目】 工業簿記
【出題問題】 費目別計算や勘定記入など
第4問は工業簿記の仕訳問題と原価計算に関する問題となります。
原価計算では、等級別原価計算や仕損費の計算などの問題のパターンを整理して覚えておくことで、しっかり対応することができるでしょう。
第1問同様、第4問も得点源にしたい設問となります。
第5問(配点 12点)
【対象科目】 工業簿記
【出題問題】 原価計算、CVP分析など
第5問は様々な公式が出てくる範囲となります。
しかし、一度覚えてしまえばそこまで難しい問題ではありませんので、一つずつ理解をしながら進めていきましょう。
特にCVP分析の問題は解きやすいため、出題された場合は確実に得点につなげましょう。
問題を解く順番
本番の試験を解くおすすめの順番は、
第1問
↓
第4問
↓
第5問
↓
第3問
↓
第2問
の順番です。
上記のとおり第2問と第3問は難しく、完答を狙うと時間がかかってしまいます。
また、解けない部分が多かった場合、その後のモチベーションにも影響が出てしまうため、まずは比較的簡単な第1問、第4問、第5問を先に解くようにしましょう。
勉強に使った参考書
実際に私が使ったテキストを紹介します。(『版』は更新さています)
1つ目と2つ目のテキストで勉強する場合、3つ目の予想問題集は必ずやっておいた方が良いです。
テキストにも練習問題がついていますが、難易度としては基本的なものとなっているため、本試験レベルの問題を経験するにはこの予想問題が必要となります。
テキストはここで紹介したものでなくても大丈夫です。
自分にあったテキストを見つけてください。
お世話になったYouTube動画
私の場合、テキストだけでは理解ができなかった論点がいくつかありました。
具体的には『連結会計』と『仕損/減損』の処理です。
その部分の理解で非常に助かったYouTube動画を共有します。
同じところでつまづいている方は、ぜひ参考にしてみてください。
連結会計 編
大谷場簿記学校講義チャンネル
概要欄にも書かれている通り“分かりやす過ぎる”講義動画です。
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計①連結会計とは?
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計②連結を攻略するためのポイント
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計③投資と資本の相殺消去とは
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計④投資と資本の相殺消去~資本金以外の資本
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計⑤投資と資本の相殺消去~のれんがある場合
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計⑥非支配株主がいる場合
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計⑦開始仕訳とは
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計⑧連結会計の流れ
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計⑨子会社の当期純利益の連結修正
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計⑩子会社の配当
【予備校講師の板書シリーズ】日商簿記2級連結会計⑪未実現利益の消去
仕損/減損 編
みそまるの簿記塾
現役経理マンのみそまるさんが「簿記は人生の選択肢を増やす」 をモットーに、日商簿記の資格取得に役立つ授業を配信してくれています。
まとめ
簿記検定2級は高度な経理処理能力を証明する資格です。
資格を取得すれば、就職や転職の際に有利になり、自分の可能性を広げることが可能となります。
決して簡単に取れる資格ではありませんが、しっかりと対策を取れば独学でも十分に合格を狙えます。
特にネット試験では、一通り勉強を完了したタイミングで受験を受けることができるため、ペーパー試験よりも合格の可能性を高めることができるでしょう。
ぜひ記事の内容を参考にしっかり準備をしていただき、合格を勝ち取ってください。